風疹対策と、田村大臣発言と、日本版ACIPと

私も輪番の担当の一人として記事を書かせていただいている、「ムコネットTwinkle Days 命耀ける毎日」に、「風疹の流行とワクチンギャップ」という記事を書かせていただきました。

記事の最後で紹介したように、7月4日(木)に、都心のオフィス街でパレードを行います。
港区六本木の三河台公園に10:30集合です。
神戸大学の岩田健太郎先生が、ご自身のブログで「小さいことでも、できることからやりましょう。田村発言と風疹について」と、行動を呼びかけてくださっています。
岩田先生のように意見を要職に送るもよし、ワクチンパレードに参加するもよし、風疹ワクチンの接種を自ら受けるもよし、風疹の流行に係る情報が掲載されているサイトを知り合いや同僚の方に教えるもよし、懇親の席でさりげなく話題にするもよし、一人一人が自分でできることに取り組むことで、大きな動きが結果として出来上がるのだと思います。
いつ行動するの、今でしょ!です。

さて、風疹対策について、田村憲久厚生労働大臣が記者会見で厚生労働省の見解を述べられています。
田村大臣閣議後記者会見概要

すごく悲しいというか、ショックというか…。
あまりにも私の思い描くものと異なります。

現在の厚生労働省の風疹対策は、
・サイトやポスター、チラシなどで接種を呼びかける
・ワクチン不足が予想されるため、接種対象者を厳選するように都道府県等に「お願い」の文書を送付
・他の疾病の発生に対しても特段の緊急対策をとっていないこととのバランスから、風疹についても、現状以上の対策をとらない
という内容になっています。

この中で、大いに疑問を抱くのが2,3点目です。
1点目は予防接種法の目的に基づけば、自ずととられるであろう策ですが、2,3点目はいくつか考えられる対策の中から、何らかの「判断」により選択されたものとなります。
この「判断」は、一体、いつ誰が下したのでしょうか。

今年の4月1日から試行されている改正予防接種法では、米国のACIPのような役割を担う機関として、「予防接種・ワクチン分科会」を位置付けています。
この分科会で、予防接種施策に係る評価・検討を行い、それに基づき政策判断がなされ、政府・行政が実行する、となるのです。
ところが、この3カ月の間に開催された予防接種・ワクチン分科会とその部会において、風疹対策については殆ど(というか、全く)議論されていません。
すなわち、法に基づき設置した評価・検討組織で議論していない事柄について、どこかで誰かが「判断」を下し、厚生労働省を代表して大臣が披露した、ということなのです。

ワクチンが不足しそうだ、といのなら、ワクチンを確保するという策もあります。
確保が難しいという結論なら、今あるワクチンを最大限に活用する方法を考えるわけですが、その際にも優先順位をつけるのかどうか、つけるならどのような考え方で割り振るのか、という点でいくつかの案が生じます。
疾病の流行を阻止できず、その結果、ワクチンで防ぐことのできる疾病(VPD:Vaccine Preventable Diseases)による健康被害が生じている、という疾病が複数あるのなら、どの疾病にどの程度のリソースを割いて対応するのか、について、いくつもの議論が生じる筈です。
そのようないくつかの想定の中で、何故、今回の厚生労働省の見解が生じたのか、どのような議論と判断が、いつどこでなされたのか、全くもって不透明ですし理解できません。

現在、積極的な勧奨を差し控える扱いとなっているHPVワクチンについても、そもそも、予防接種部会の議論において、何ら話しあってこなかった「任意接種の段階での公費助成」という、一体いつどこでだれがどのような議論に基づき決定したのかわからない結論だけが突然提示され、予防接種部会から大ブーイングが起きたことは、厚生労働省自身が経験していることです。
その際にも、「やはりACIPのような評価・検討組織が必要だ」ということになり、今回の予防接種法改正に盛り込まれたはず。
なのに、全く同じ轍を踏むというのは、理解に苦しみます。

今後開かれる予防接種・ワクチン分科会の親会議と部会で、速やかに議論し意思決定すべき事案であり、その内容に沿って厚生労働省は政策を遂行する、これが法の順守です。
大臣が会見で示した見解は、あくまでも正規の手続きを経ていないものであり、評価・検討組織の意思決定を受け、速やかに撤回し、国民の想いに沿った施策を遂行すべきです。
スポンサーサイト

HPVワクチンの積極的勧奨の中止に関して

昨日の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と薬事食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同会議で、HPVワクチンの積極的勧奨を差し控えることが決定されました。
昨夜より多くのメディアがこの事を報じていますが、「積極的な勧奨の中止」を国民がどう受け止めるのか、その結果としてどのような行動変容が起きるのか、注目していかなければならないと思っています。

今回の決定については、評価が難しいなというのが正直なところです。
余りにも様々な事柄が絡み合うものですから、単純に良かった、悪かった、という評価はしにくいです。
ただし、今回の決定に至った議論と結論に持たせた意味を踏まえて行動していくことが関係するすべての人たちに求められますし、これからの取り組み、行動が、今回の決定についての評価を大きく左右するものと思われます。
評価はその段階でなされるべきものではないかな。

今回のHPVワクチンにかかる件は、我が国の予防接種制度にかかる意思決定プロセスの拙さ、各種サーベイランスの不十分さ、国民の予防接種や医療、科学といったものに対する理解不足等がもたらした事柄だと考えています。
もちろん、誰が悪いとかいうものではなく、まさに今、それらの改善を進行形で進めている中で生じてしまったことであります。

4月1日から改正された予防接種法についての議論を中心に進めていた予防接種部会においても、HPVワクチンの取扱いについては混乱がありました。
私も過去にMRICに拙文を投稿し、公費助成にかかる意思決定について、少し嫌味な意見を表明しましたが、
http://medg.jp/mt/2010/09/vol-276.html
今回のような事態は、起こるべくして起きたと言えるかもしれませんし、その遠因はその時に指摘した理不尽さにあるのではないでしょうか。
繰り返してはいけないことのひとつだと思います。

昨日の会議で重視されたように、接種後に健康被害を生じた事例が報告され、そのうち今も回復に至っていない事例があるという事実、そしてそれらの健康被害がワクチンの承認や定期接種化に至る議論の中で殆ど想定されていなかった事態であること、現時点では因果関係の有り無し含めて「わからない」ということが多いと考えられること、などは決して看過すべきものではないでしょう。
選挙区的勧奨が中止されている期間に、これらの課題にどのように対処していくのかが重要です。

予防接種には常にリスクが伴います。
それは、接種するリスクと接種しないリスク、言い換えれば副反応・副作用と、疾病罹患というリスクです。
しばし、リスクとベネフィットの比較とされがちですが、ベネフィットはとらなければ「ゼロ」に過ぎません。
ゼロなら誰もが受け入れやすいのですが、ゼロは無いんですよ、本当は。
一方のリスクをゼロにするなら、もう一方のリスクを受け入れざるを得ない、だからリスクはゼロにはなりません。
昨日の会議の最中、健康被害を生じた方々のことと、予防接種で防げた可能性が高い疾病に罹患した方々のことと、双方のことが頭の中にありました。
果たして機能の議論は、その双方をきちんと意識下において意思決定なされたのか、私は少々疑問を感じています。
そのことで結果が変わったかといえば、そうは思いません。
しかし、そのことを意識しているか否かは、これから先の行動に強く影響します。先にのべたように、今回の決定にかかる評価は、今後の行動如何で変わるものです。
後々、「あの決定は間違いだった」とだけは絶対にして欲しくない、してはいけません。
今回の結論が今後のより良い予防接種環境に資するものであったとなることを強く強く期待します。

最後に、昨日の会議の傍聴は一種、異様な雰囲気でした。
今までには例が無い指定席制度、傍聴者の立入禁止エリアの設定等、前回の会議の最後に起きた出来事への対応策がなされていました。
耳に入ってくる会話も、「推進派」とか「反対派」とか、委員個人への誹謗とか、従来の傍聴経験ではあまり聞いたことが無い会話が多く聞かれました。
こういったことは、すごく頭にきますし、やめていただきたい。
私は予防接種部会時代から傍聴し続けてきました。細菌性髄膜炎から子どもたちを守るワクチンの早期定期接種化をはじめ、予防接種制度の改善を強く求めていたからですが、議論の過程でも決定された事柄でも、大きな失望を抱いたり憤りを感じたりすることは決して少なくありませんでした。
思わず声を上げたくなる気持ちはわかります。
特に、自らがラグ被害や副作用・副反応被害に遭われた方やそのご家族であれば、尚更ですし、そのような方々が思わず感情を発露してしまっても、私はそのことをとがめる気持ちは無いです。
しかし、前回、そして今回と、そうした当事者やご家族では無い人が、場の雰囲気に好ましくない影響を及ぼしたようです。
子どもたちのために、ラグ被害も副作用・副反応被害も可能な限りゼロに近づけて行きたい、どうしても避けられなかったリスクについては速やかな対応による救済を実現していきたい、ということを考えるなら、敵対関係を煽り、当事者を中傷し、委員や事務方を恫喝まがいの行為で委縮させる行為は絶対に避けなければいけない行為です。
真剣に取り組む気持ちと覚悟があるなら、二度とこのような行為は繰り返して欲しくないです。

予防接種に伴う二つのリスク、そのリスクと向き合う上では、推進派も反対派も無いんです。
今回の決定を受けて、二つのリスクに最大公約数で向き合う取り組みがなされることを心から望むものです。
プロフィール

+afc

Author:+afc
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Donation(寄付)
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR